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鉄塔の上で寝るという行為は、慣れれば苦痛でも何でもない。むしろ目覚めと同時に目に飛び込んでくる朝の景色は壮観で、一日の始めにはもってこいだ。
俺――鋼田一とでも名乗っておこうか―は、首と肩を回すと大きくのびをし、胸一杯に冷たい空気を吸い込んだ。胸に染み入るような心地よさが、今日も気持ちいい。
身体の隅々まで血液が循環していくのを実感した後、毛布を柱に縛り付け(風で飛ばされないようにするためだ)足場を確認して飛び降りる。
俺が、この鉄塔で生活するようになってもう何年になるか分からないが、今では苦もなく自在に鉄塔内を飛び回れるまでになっていた。
五回の跳躍と着地を繰り返し地面にたどり着くと、俺は辺りを見回した。最近日課になっている行為。180度首を回したあと後ろを振り向く。と、いつものように赤いリボンが目に映った。
鉄塔の、四つあるうちの南西方向の足にもたれかかって空を眺めている少女は、身長と顔の幼さから察するに小学生の高学年と言ったところだろうか。
長めのおさげに結びつけられた真っ赤なリボンが印象的な女の子は、ここのところ毎日鉄塔に来て、こうして上を見上げているのだ。
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