鉄塔少女

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「よう、今日も創立記念日か?」      鋼鉄の足に俺も身体ごと寄りかかり、声をかける。少女はこちらを見ようともしないが、しばらくして口を開いた。     「今日はね、校長の誕生日なの」   「……四日前がそれだったな」   「じゃあ、教頭の誕生日」   「教頭の権力、侮れないな……」      もちろん嘘だろう。一週間以上連続で学校が休みなんて、俺は夏休みや冬休みしか思いつかない。春休みはそこまで長くないしな。いや……それは地方によって違うか? 何にせよ、今日は六月十五日。平日だ。    「鉄っちゃんは、今日もニート?」      お返しのつもりか、かわいげのない声で呟いた言葉の刃は、俺の心をズタズタにしようと唸りをあげて飛翔する。が、ニートと言えばニートなので、今更言われたところでどうと言う事はない。ちなみに鉄っちゃんの由来は『鉄塔に住んでる人』だからだ。     「うるせえよ。お前も、学校行かないと俺みたいになるぞ」      俺みたいになるというのは語弊が無くもないが、似たようなものか。    部屋から『出たくない』のと鉄塔から『出られない』ってのは結局、一般人から見たら同等。認めたくないが、奇怪さでは俺のほうが勝っている。     「学校なんていいの。私に酷い事する人間ばっかり」     そう言うと少女は顔を膝の間に埋めてしまう。     「酷い事って何だよ。話してみろ、相談ならのってやるぜ?」
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