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後ろからかけられた俺の声に、フランは空を見ながら片手を上げた。
どういう教育をすれば、こんな小学生が育つんだ。親の顔が見てみたい。
心の中で愚痴をこぼしながらも、一人で食べるには明らかに多いカレーの入った鍋を火にかけた。
何回も言うようだが、ここのところ毎日コイツは来ている。朝ご飯を一緒に食べるのもこれで四回目くらいなのだ。前もって多く作っておいたのは、一人分では自分の分が無くなるかも知れないからだ。他意はない。
焦げ付かないように混ぜながら、煮詰めたカレーに火が通っていくのを眺める。段々と独特の香りが漂い始め、俺の胃が朝のエネルギーを求め活動しだした。
この分だと、完全に火が通るのは、あと五分ってところだろうか。
俺は鍋をかき混ぜながら、空を眺め続けるフランに目をやった。
コイツは……何なのだろうか。ある日突然、目の前に現れたかと思うと、今では当然のように、朝から夕暮れまでこの鉄塔で過ごす。
そしていつの間にか姿を消しているのだ。
初めは仗助さんから聞いた幽霊の類かと思ったが、ちゃんと実体もある。ましてや、飯を食べるんだかられっきとした人間だろう。
ならば、この不思議な少女は……
「焦げるわよ」
「……ん? 何か言ったか?」
「焦げるって言ってるの。っていうかお腹が減ったからさっさとよそって渡してよ」
手元を見ると、良い感じに暖まったカレーが湯気を立てていた。
しかし、鉄塔の足にもたれかかって空を見上げた状態から、カレーの適温を見極めるとは……。ヤツは、ただ者ではないのかもしれない。
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