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そんな事を思いながら、鍋を傾けてカレーをお椀へと注ぎ、俺は立ち上がった。相変わらず微動だにしない少女の顔の近くに、自慢の一品を近づける。
「ありがと」
「どうも。スプーンは一つしかないんだが――」
「持参してるわ」
お椀を渡すのと、フランがスプーンを取り出すのはほとんど同時だった。凄まじい用意周到さだな。
……ていうか朝ご飯は食べる気満々だったんだな。
「いただきます」
「おう。召し上がれ」
「…………ニンジンは入ってないでしょうね?」
「今更そんな可愛いキャラ付けしても効果無いぞ。なんちゃって小学生」
「失礼な……」
言うなりニンジンをほおばって見せるあたり、俺の予測は外れていなかったようだ。
料理の批評もせず、黙々と具を口に運ぶ姿は、まんま小学生のそれだったのが少し微笑ましい。
俺は口元にお椀を持っていき、かき込むようにしてカレーを流し込んだ。
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