ジュノンの物語

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赤き月が戯れのように姿を隠し、星の瞬きが強くなったころ。 白金色の腰までのストレートヘアの少女は白い窓辺から、空を見上げていた。 夜の上に高い場所だからか、風は幾分冷たかった。 少女は真っ白い塔の最上階である五階にいた。部屋は四角く、20畳ほどもあろうか。 内装は昼間のように明るい照明と、白く汚れも皺もないベットが大きい窓に沿ってあり、他にもパーティードレスなどが、クローゼットに収まりきれず2、3出ていた。 その中に明らかにパーティードレスではない、純白のふわふわしたレースのドレスがある。 少女は年齢にして、15、16歳ほど。 しかし夏の晴天を映すような蒼色の瞳も、ホッソリとした青白い頬も、ずいぶんと寂しそうだった。 絶世とまではいかないまでもそれなりに整った顔立ちに、黒色の細身パンツ、真っ白いシャツに紅いジャケット。首にはきらびやかな装飾のネックレス。 少女の名はジュノンといった。名字などはなく、正式名称としてはフォルクス(王)の娘・ジュノンと呼ばれた。 ジュノンは高貴なる白鷲という意味を持ち、この赤き月の国とも呼ばれるフィオールの姫、と尊称される存在だった。 .
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