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「1-Dは…とここか!」
校舎の3階に私のクラスがある。
不安と期待が混じった気持ちを抱え、私は後ろのドアを開けた。
教室の中は皆も同じ気持ちなのかピンッと張り詰めた空気をしている。
黒板に貼られている座席表を見て自分の席を探す。
『やった!窓側だ!』
と心の中で呟き軽い足取りで席に向かい座った。
「ふぅー」
思わず溜め息が漏れた。
すると、いきなり教室にいる女子たちが騒ぎ始めた。
そちらに視線を向けるとドア付近に女子たちが集まっていった。
「帝紀、久しぶり!」
「同じクラスになれてよかったぁ~」
皆口々にその輪の中心にいる人物に話しかけている。
「俺も嬉しいよ」
そこから少しだけ女子とは違う少し低くて澄んだ声が聞こえた。
その人は大勢の女子に囲まれそれを上手くかわしながら自分の席を確認して席につく。
『私の隣かよ!!』
彼が座ったのは、
私の隣…
思わず彼を見つめてしまった。
すると、彼は綺麗に両方の口角を上げて私に言った。
「よろしくね」
な、何かこの笑顔ズルいんですけど!!
「こ、こちらこそ」
彼から視線を逸らし、言葉を返す。
笑顔、素敵だな…
「君何て名前なの??」
彼はまた私の方を見て話しかける。
「…星浦祈羅(ホシウラキラ)です。」
とりあえず視線は逸らしたまま言う。
だって今、絶対顔赤いもん。
「俺、雪原帝紀(ユキハラタイキ)。」
彼、雪原くんは私の顔を見て軽く笑みを浮かべながら名前を告げる。
「雪原くん…」
思わず呟いてしまった。
「握手」
雪原くんはその二文字を言い、右手を出してくる。
私も右手を出す。
だってシカトすんのは失礼だし。
すると、私より少し大きくて骨張った手が私のそれを包み、雪原くんの顔が近づく。
「ッ!!!」
「手の甲にキスしただけで赤くなるとかかわいい…」
そう言って雪原くんは上目遣いで私を見て二ヤッと笑った。
「なッ!?」
私は思いっ切り自分の手を解き、左手で右手を包む。
「ずるーい!帝紀、私にもしてよ!」
今の私たちのやり取りを見ていた女子がそんなことを口にする。
「だーめッ」
可愛いと言えるであろう声でその女子に答える。
「何でよー!!」
何でよはこっちだって。
私は右手の甲の彼の唇が触れた所が熱を帯びているのを感じていた。
そんな私を楽しそうに見ていたなんて気づかずに…
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