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入学式後、皆はそそくさと帰って行った。
私は、あさチャンのクラスが終わるまで教室で待っている。
『やっぱ桜って綺麗だな』
窓の外を眺めてみた。中庭には大きな一本の桜の木が土に根を張り力強く立っている。
「祈羅、ちょっといい??」
そんなことを思っていると隣から私を呼ぶ声がした。
「何ですか?」
てか、いつの間に呼び捨てになってんのよ!
そう思いながらも声には出せなくて雪原くんの後ろをついていく。
私たちは一緒に渡り廊下に出た。
さっきまで生徒がいた廊下は今はシンッと静まり返っている。
雪原くんは振り向き、私の左手首を掴み、そのまま壁に押さえ付けられる。
「?!」
な、何が起こったのーー
恐怖のあまり声が出ない。
「抵抗したらヤバいことしちゃうよ?」
そんな私を見て目の前にいる彼は先程みたいにニヤッと不敵な笑みを浮かべている。
体が、体が震える
全身に冷や汗が流れ、口の中が乾く
『助けて!!』
ギュッと目をつむる。
次の瞬間、手首を掴んでいた力が弱まった。
「祈羅の兄貴ってもしかして亜慧さん??」
「えッ、何であさチャンのこと…」
てっきり何かされると思ったらあさチャンのこと聞いただけなんだ。
すると体の震えは止まり、口の乾きもなくなる。
再び雪原くんを見ると、彼は視線を別の場所へ移す。
「フッ…」
右の口角を上げ笑い、顔を近づけてくる。
「ちょ…んッ…やッ」
拒絶する前に雪原くんに唇を奪われていた。
「チュッ」
リップ音がわざとなのか何度も鳴る。
「やッ…」
嫌がるのをよそに、口を開け舌を入れてくる。
彼は苦しむ祈羅を見るのではなく横目である一点を見ていた。
そこには…
「帝紀、お前…」
亜慧が立っていた。
『あさチャン!!』
心の中で叫ぶが声が出ない。
自力で雪原くんから逃れようとするが力が抜けて動けないでいる。
そんな私を知ってか知らずか彼はさらに舌を絡ませてくる。
「てめぇ、人の妹に…」
亜慧が帝紀に掴みかかろうとした時に帝紀はやっと祈羅から離れた。
「亜慧さん、妹さんの前ではキレないんじゃなかったですっけ??」
「消えろ…」
普段のあさチャンからは想像もつかないものすごく低い声だ。
「はいはい。んじゃ、またね祈羅♪」
雪原くんは私から離れ、笑顔でその場を去って行った。
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