始まりの白譜

3/7
前へ
/25ページ
次へ
と、ふいに、『クシャ』と男がして、視界が、白と灰色の不思議な模様になる。 「…何だ?」 つまんで引き剥がして見てみれば、それは、綺麗な音符の並んだ、手書きの楽譜だった。 (何でこんなモンが…?) しかし、その答えはすぐに出た。 「すいませ~ん。」 少し遠くから聴こえた女性の声。 その方向を見て、俺は…固まった。 と言っても、決して悪い意味ではない。 なぜなら、そこにいたのは… 艶やかな黒髪を風に流し、形のいい眉と切れ長の目の、健康的に肌を上気させながら走ってくる小柄な美女。 その麗らかさに、魅了されていたのだ。 「あ…これですか?」 とっさの判断で、手に持っていた楽譜を差し出す。 彼女はにっこり笑うと、 「はい…ありがとうございます。」 その笑顔は、とても可愛くて。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加