13人が本棚に入れています
本棚に追加
と、ふいに、『クシャ』と男がして、視界が、白と灰色の不思議な模様になる。
「…何だ?」
つまんで引き剥がして見てみれば、それは、綺麗な音符の並んだ、手書きの楽譜だった。
(何でこんなモンが…?)
しかし、その答えはすぐに出た。
「すいませ~ん。」
少し遠くから聴こえた女性の声。
その方向を見て、俺は…固まった。
と言っても、決して悪い意味ではない。
なぜなら、そこにいたのは…
艶やかな黒髪を風に流し、形のいい眉と切れ長の目の、健康的に肌を上気させながら走ってくる小柄な美女。
その麗らかさに、魅了されていたのだ。
「あ…これですか?」
とっさの判断で、手に持っていた楽譜を差し出す。
彼女はにっこり笑うと、
「はい…ありがとうございます。」
その笑顔は、とても可愛くて。
最初のコメントを投稿しよう!