序章

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「怖い!」「なんなの?あれは!」… 恐怖で震える手に緊張を与えノートのキーボードを叩く。「ターゲットが殺された!目の前で起きたのに犯人が見えない!怖い…チーフ助けて!」 密談の場所と情報を得て、私はターゲットを待ち構えていた。 リポーターを装い近付こうとした瞬間だった。 ターゲットは車を降り、密談の場とされるホテルの玄関への、少し長いアプローチを歩き出した時にそれは起こった。 「なんなのあれは!人間が宙に舞い上がった!」 「首筋を裂かれ…鈍い音で地面に落ちた!なのに彼以外に何も見えなかった!…何が起きたの!…」 恐怖心を抑える為、異様に渇く喉の渇きを促す為に500mlのミネラルを一気に飲み干した… 鼻腔に蔓延る「鉄」の臭いに鳴咽が止まらない。 「まだ!まだなの?」「早く!早く返事して!チーフ…」 携帯が鳴り、2コールも鳴らぬ間に電話を受けた。 「今そっちに向かっている。いいか、落ち着くんだ美咲!確認する。ヤツは死んだ、いや殺されたんだな?」 「はい…」 「しかも手を掛けた相手が見えなかった!そうだな?」 「はい…」 「怖い…早く来て!」 「もう少しだ!いいか、落ち着け!」 それだけ話しをして通信は切れた。 組織に於いては、任務遂行の為なら「非情」「冷徹」、まして「女」と言う事で好ましくなく、疎ましい存在とされている私。 しかし、任務に関しては並み居る屈強の男達に、知識理論武装で押さえつける男達に引けを取らない実績を残して来た。 この私を組織に受け入れ『informer』として私を育てた佐伯仁(チーフ)と数々のクライアント案件を熟して来た結果のもの。今までも幾度と無くの身の上の危険を感じる場面も経験してき来た。 しかし、それは現実に考え得る危険だが、ターゲットの死は、目に映る、想像だにする「常識?現実?」を遥かに越えている。 『informer』として始めて「恐怖」を感じた。 やがて佐伯が訪れ、私は少しの安堵を得た…
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