1、始まりの思い出。

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僕はずっと、恋なんかしちゃいけないと思ってた。 「ごめん。」 例年よりも寒さの厳しい12月、この時僕は高二だった。 教室では、ストーブが限界まで温度を上げられ、赤い光が熱気と共に輝いている。 廊下に一歩踏み出ると、冷えた空気が頬を叩いた。 吐息が白く濁って、空気と交わる。 強い風に吹かれ、がたがたと揺れる窓ガラスごしに空を仰いだ。 寒さで身体が震える。 自分へのこの仕打ちは、また一人、女の子を泣かせてしまった事への罰だ。 (好きだって言われても困るよ。) 僕は誰とも恋をする気はないから。 今までも、これからも。 前に、飽きたら捨てれば良いと言って来た人が居たけど、そんなのは無理なんだ。 それでも振った相手を想って泣いたのは、あれが初めてだった。 その人、内田早紀(ウチダサキ)は、もうすぐ卒業する。
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