303人が本棚に入れています
本棚に追加
小金井 司
───‥‥‥
【全日本中学サッカー選手権】
あれは俺の中学が二回戦まで勝ち上がっていた全国大会だった。
相手は優勝候補の名門、スコアは前半終了時点で2‐0とビハインドしていた。
その中俺はベンチで皆が必死に闘っているのを歯がゆい思いで見守っていた。
俺はこれでも小学時代は埼玉県の選抜にも選ばれ、全国のエリートプログラムにも選出されていた
。
俺の努力で積み上げ、磨いていた得意のドリブル。
しかし、俺が入学した中学は完全堅実なパスサッカー。
チームメイトからは部一と認められていたが、監督が俺を使うことはなかった。
そして、小学時代からコンビを組み、埼玉県選抜もエリートプログラムも同じだった貴也だけは出場していた。
貴也「監督、司を使ってください」
貴也は監督にそう言った
監督「‥‥‥ならん。司のプレーはウチのサッカーを崩す」
貴也「もう今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!2‐0で負けてるんです。ここは司を使って流れを変えるべきですよ!!」
監督「高沢‥‥‥お前はフィールドから降りたいのか?」
期待した俺が馬鹿だった。
このクソジジイが俺を使うわけない。
そのままのスコアで俺の中学は大会から消えていった。
中学で猛活躍した貴也には幾つもの高校からスカウトがきたが、貴也はサッカー部のない“大滝高校”に進路を決めた。
一方、中学で試合に出場したことのない俺はどの高校からもスカウトを請けず、仕方もなしに受験勉強に打ち込んでいた。
サッカーからは離れよう。
そう決めたはずなのに、毎日のハードな練習と、なぜか貴也が行くという“大滝高校”への進路の思考は変わらなかった。
それはまた貴也とサッカーしたいからなのか?
俺は何校ものスカウトを蹴ってサッカー部のない高校に行くことを決めた貴也への怒りと、自分の貴也への執着心に対するふがいなさから貴也と大喧嘩して縁を切った。
それでも俺はなぜか“大滝高校”に入学してしまった。
‥‥────
最初のコメントを投稿しよう!