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真っ暗闇の中、世都は確信の有る足取りで歩いた。
何も見えない真の闇の世界。
使役を持つ事の出来る人間のみしか来れない世界。
その世界で暫らく歩くと、金と赤い色が見えた。
そこへ迷いもせずに歩くと、目が眩んだ。
闇の中を歩き続けた為、目が闇に慣れてしまったのだろう。
暫らくその場に立ち尽くして居ると、段々と目が慣れてきた。
そこには大きな赤い鳥が横たわっていた。
世都はゆっくりと歩み寄り、そっと背を撫でた。
鳥と思われたそれは、翼の下に白い人の腕を持ち、鳥の体に黒く光る猛禽類(モウキンルイ)の足。鳥の頭にセンターパーツの赤い鬣(タテガミ)。長い尾は金色に輝いていた。
「珪翔(ケイショウ)……」
珪翔と言われた生きものは、息をするのもやっとと云った状態であった。
「珪翔、尾の羽根、一枚貰うね」
言って世都は珪翔の尾の羽根を引き抜いた。
それでも、微動だにしない珪翔を世都は見た。そして、珪翔の横に膝を付き、赤い髪の様な鬣(タテガミ)を梳いた。
「待っててね、珪翔。必ず楽にするから……」
世都は愛しそうに珪翔に語り掛けた。
どの位そうしていただろう。暫らくして立ち上がった世都は、珪翔の羽根を大事そうに持ち、背を向けてから静かに歩きだした。
「行ってきます。珪翔」
背中越しに挨拶をし、世都は又、闇の中を歩きだした。
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