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所々、かまいたちの様になっていたのである。
それは、深く深く二人を切り裂いた。
体の大きな潤の出血の所為であろう。辺り一帯は、薄い桃色に染まっているかの様に見えた。
無論、同様に傷を負った世都からも、出血はしている。
痛みと出血により、朦朧(モウロウ)としながらも、世都は、珪翔のそれを真一文字に薙(ナギ)払った。
避ける事も出来ず、まともにそれを食らった潤の体には、骨迄到達しかねない位の傷が、大きく深々とついた。
意識を無くした潤は、まるで、死した魚の様に水面へと浮かび始めた。そして、同時に物凄い勢いで、水が消えていった。
辺りを満たしていた水は、潤が作り出した物だったからである。
何もない、薄茶色な砂の上に、潤と世都は横たわっていた。
世都は息も浅く、今にも意識を手放してしまいそうであった。しかし、世都はそこで意識を手放す訳にはいかなかった。
まるで、這いずるかの様にして潤の頭部に行った。
水の浮力で支えていた体は、いまやその助けが無く、鉛の様だ。
震える手足でなんとか膝立ちになり、潤へと声を掛けた。
「下ってもらう」
それに反応した潤は、目蓋を開き、うろんな瞳で世都を見た。かと思うと、力なく瞳を閉じた。
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