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世都はそれを握り締めた。そして、やっとの事で手に入れたそれを実感した。
「尚も紅く点滅するとは、強情な珠(タマ)だな」
言って、息をスウッと吸い込み、血に塗れた手に、汚れ無き手を軽く重ねた。
そして、力強く潰さんばかりに握り締めると、意識の無い潤の体が、苦しそうに跳ねた。
世都は、それに構わず、握った手に、フウッと息を吹き掛けながら開くと、それは青緑色に変わり、点滅を止めた。
「苦しむのが、そんなに好きか?」
世都は無表情で呟いた。
今の争いと、体調の悪さから来る震える手から、珠を落とさぬ様にし、それを自らの鳴動(メイドウ)を繰り返す心臓部へ押し当てた。そして、顔を歪ませ乍(ナガラ)一気に押すと、それは体内に消えた。
「っ、はぁはぁはぁ……」
世都は目を見開き、脂汗を流しながら、膝をガクリと付いた。
続いて、手を付き、肘を順に付いた。
生汗が全身から吹き出し、砂へと滴り落ちる。
世都は、ギッと潤を睨んだ。
「この期に及んで……、この足掻き様かっ」
言うなり、手に気を集めた。薄紅に染まったその気の固まりを、拳を握った手のまま、心臓部に勢い良くぶつけた。
どん!
鈍い音と共にそれが体内に入った。と、同時に、やはり潤の体が跳ねた。
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