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「この落とし前として、しっかりと働いてもらう。良いな、潤……」
言って、世都はその場に布切れの様に倒れ込んだ。
「暫らく、動けないな……」
世都は何もない、ただ、砂のみが広がる辺りを見回した。
体が辛すぎて、意識を手放しきれない。
新しく珠を取り込んだ体の一部分が、ドクン、ドクンと打った。
観念したかの様に、珠は世都に支配され、一部となっていた。
気付けば、いつの間にか眠っていたらしかった世都は、ふと意識を取り戻した。
のろのろと体を起し、ゆっくりと立ち上がった。
「っ!」
右太腿に鋭い痛みが走り、血が流れ出た。
先程の傷が開いたのだ。
世都はそれに一瞥し、血が流れるまま、脱ぎ捨てたローブ迄歩いた。
歩いた後に滴り落ちる血。
乾いた砂にすぐに吸われながらも、そこが赤黒く残った。
一度砂を叩き落とし、拾ったローブを着込んでから、自分の獲物を拾い、潤の傍へと近寄ってから屈んだ。
潤の後頭部には、黄金色に輝く立派な角が有る。
それは光を返し、キラキラとしている。
「綺麗な角」
そう小さく呟いた。
世都が両手を合わせたかと思うと、手は淡く赤い光を放った。そして両手をゆっくりと離すと、鋼色の固まりが表れた。
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