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言われた潤は、ゾクリとした。本当に遣り兼ねないと思ったからだ。
その為、渋々指示に従う事にした。
潤が空中高く息を吹くと、キラキラとし乍(ナガラ)、風と水が集まり、ミストの様に白く優しく世都を包んだ。
さわりと風が髪を弄ぶ。
ミルク色のそれに包まれた世都は、とても心地よかった。
暫らくすると、それは静かに消え去っていった。
「万全になっていない」
世都は不服そうに、自らの腕を少し上げ乍そう言った。
『お前の……』
「お前ではない。その呼び名は貴様に対してだけで十分」
言い掛けた潤を遮り、世都は不服を言った。
『名は何という?』
「名前すら読めないお前に、名乗る積もりはない」
世都はツンとし乍(ナガラ)、言った。
『……。ならば、隠さない様にしてくれないか』
「そんな事を言われるいわれは無い」
世都はどこ迄も冷たい。
『あなたの、あなたの体調、使役が引きずっているな』
「だから万全に出来ないのか?」
『あぁ』
世都は、期待外れと言わんばかりに一瞥し、上空を見上げた。
「恢濫(カイラン)」
世都はその名を呼んだ。
その名を聞いた潤は目を見開いた。
『黄金の足を持つ恢濫かっ!』
そんな潤を無視し、世都は更に呼び掛けた。
「恢濫、恢濫。私の元に来て。棲伽(セイカ)に帰ってるでしょ?」
すると、蒼い筋が横に表れ、そこから恢濫が零れる様にして出た。
その恢濫は、世都の部屋に居た時より大きい。
『世都! 血の匂いがっ!』
言うが早いか、恢濫は潤の首元に噛み付いた。
『ぐわぁ!』
いきなりの事に、潤は堪らない。
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