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闇を抜け、暖色の光が溢れる場所には、珪翔(ケイショウ)が横たわっていた。
世都は、スルリと背から滑り降り、珪翔へと近づいた。
そして又、鬣(タテガミ)を梳(ス)いた。
「珪翔、お待たせ。すぐに楽になるから」
その頃、浮遊しながら来た潤が、恢濫の横に降り立った。
『あれは』
『珪翔だ』
潤の問い掛けに恢濫(カイラン)が答えた。
遠目でも解る、容体の悪さに眉を潜めた潤であった。
『いつからあの様な状態に……』
潤は疑問を恢濫に投げ掛けた。
『もう二月はなるだろう。話は変わるが、自分の怪我位治癒させたらどうだ』
潤には痛々しい傷がそのままにしてあった。
それに潤は、勝手にしたら後が恐いから、と言った。
恢濫はふん、と笑い、変な所で忠義だと言った。
『恢濫は確か、癒しが出来るのではなかったか?』
『出来る。が、私は大地と木を司る為、対象の者に体力がなければ出来ない。潤の様な力はない。水や風程の治癒力は、大地と木には無い』
恢濫は苦虫を噛み潰した様な顔をした。
そして、珪翔(ケイショウ)の鬣(タテガミ)を梳く世都の元に歩み寄ろうとした。
「恢濫!」
足を踏み出した時、世都が激しく呼んだ。
「珪翔、目開けた!」
慌てて傍に行くと、珪翔が、金色と緑の混ざった瞳を開けていた。
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