使役

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『珪翔(ケイショウ)…』  話し掛けた恢濫に、珪翔は瞳で返事をした。 「恢濫、私の調子が良くなったからかな?」 『そうかも、知れないな……』  言って二人は、ふっ、と安堵の息を吐いた。 「潤! 早くして!」  溜息も束の間、振り向いた世都は、潤へと怒鳴った。  早く、早く珪翔を治癒させて、と。  それを聞いた潤は、滑るように珪翔の元に飛来した。そして、世都にした様に空中に、息を吹き上げた。  先程よりも、より多く。  キラキラと集まったミストと微風は、珪翔をすっぽりと包み込んだ。  先程よりも濃いそれは、優しく珪翔を抱き込む。 「恢濫……」  世都は不安そうに、恢濫に擦り寄り、毛を弄んだ。 『大丈夫だ、世都。珪翔は良くなるよ』 「うん……」  キラキラとしたミストは、輝きながら、僅かに世都の元へも漂った。
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