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ミストが消えてから、世都は珪翔(ケイショウ)へと駆け寄った。
「珪翔?」
そっと呼び掛け、膝を付き、擦り寄った。
『世都……』
僅かに口が動き、綺麗な声が微かに聞こえた。
その声を聞いた瞬間、世都は静かに涙を流した。
『世都? 泣かないの』
珪翔は翼をゆっくりと動かし、世都を包んだ。
『世都、世都?』
名を呼ばれても、世都はただ、泣いていた。
そんな様子を見ていた恢濫が、潤に問い掛けた。どれ位良くなったのか、と。
『完全ではない。暫らくは、まだ横になっていないと辛いだろう。私が毎日通おう』
言った潤に、恢濫は有難う、と言った。
『珪翔は、世都とはどういった関係だ』
『私と、同じ』
その答えを聞いた潤は、やはりか、と言った。
『なんだ。又、金の尾を持つ珪翔が、と言わないのか?』
皮肉めいて言った恢濫に、潤は、まぁ、と言った。
『怪我、治せ』
『世都に確認してからにする。しかし、私達は、あんな人間如きに下されたのか』
溜息混じりに潤が言った。
『私は下された訳ではない。珪翔もな。下されたのはお前だけだ』
不快そうに言った恢濫は、馬の様な尾をぱたぱた、とさせた。
『じゃあ、何故使役となっている』
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