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『世都に聞くが良い。気が向いたら話すだろう』
恢濫(カイラン)はそっけなく言った。そして、一つ言えるのは、と潤を見ながら言った。
『恢濫と珪翔は、世都が可愛くて仕方がないんだ』
『ふむ……。解らん。あんなオヒメサマの何が良い』
言い乍、潤は世都を見た。すると突然、世都は潤の元へ走り寄ってきたので驚いた。
まさか、今の呟きが聞こえたのだろうか?
「潤、珪翔にもう一度さっきのをして」
『癒しの霧をか? 無理だ』
ほっとしつつ断った潤に、世都は露骨に嫌な顔をした。
「何故?」
『癒しの霧は、掛けられた者の治癒力を高める。よって、やみくもにそれを高めれば、却って内が、命(タマ)が参ってしまう』
「じゃあ、それも治してくれないか?」
『それは、誰にも出来ない。どの聖獣にも。聖獣にも出来る事と出来ないことがある』
言った瞬間、世都は悲しそうに恢濫を見上げた。
恢濫は、世都を自分の元に寄せると、黄金色の足先に座らせた。
『世都、それは仕方が無い事だ。薬も一緒。恢濫も努めよう』
それでも世都は、納得がいかない様である。
『珪翔は一回の事で翼を動かせる迄になった。一日置きにしても、すぐに良くなる』
「潤はしないよ」
世都は拗ねたように、恢濫に寄り掛かった。
「潤の心は違うトコに行っているから」
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