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世都は淋しそうに潤を見上げた。
「下されたから、仕方なく遣っているだけ」
『……』
緑掛かった茶色い目が、潤を見ながらそう言った。それに潤は答えられないでいた。
「知ったから、戒めを付けた。絶対服従する様に」
世都はきりりとした表情で言った。
しかし、その表情には淋しさが見え隠れする。
『世都、それを俺に直接聞こえる様に言ってどうする。力任せに下して、力任せに支配するのは、端からそれが解っていたからだろう?』
潤は世都の元に首を伸ばし、顔を正面から見た。
それに世都は答えなかった。
『何故、何も言わない』
脅すでもなく、見下すでもなく、潤は真っすぐに世都に問い掛けた。
「……。潤、首の傷は珪翔の怪我が治る迄、治癒するのは許さない」
言ってぷい、と横を向いた。
『……。子供だな』
言った潤の言葉に、世都は思い切り怒った。そして声を荒げた。
目に涙を溜め乍(ナガラ)。
「子供だよ! 今月十六歳になったんだもん! 首輪付きのくせに~!」
言ったと同時に、涙を流した。瞬間、戒めが鈍く光り潤が苦しんだ。
『ぅがっ!』
それに焦ったのは恢濫である。
『せ、世都! 潤が逝ってしまう!世都、世都! 止めなさい!』
「かいらーん!」
叫び乍、世都は恢濫に抱きつき、泣きだした。
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