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「男を帰してきました、それより大丈夫でしたか?」
「大丈夫よ……」
「どんな話だったんですか?」
「仕事の話よ……断ったわ」
美奈子は面倒臭くなり嘘をついた。
「そうですか……。すいませんでした」
「次からは気をつけて」
「はい、それでは失礼します」
相沢は部屋を出ていった。
『やっと落ち着ける……』
と美奈子がそう思ったときだった
ピピピッピピピッ
携帯が鳴り出した、画面を見ると着信は悠介からだった。
矢田 悠介(ヤタ ユウスケ)は美奈子の一つ年上の彼氏だった。
「もしもし、美奈子?」
「どうしたの?───」
―――――――――――――――
悠介と出会ったのは今から四年ほど前の何かの表彰式のパーティーの席でのことだった。
父に連れて来られた美奈子は、早く帰りたいと思っていた。
『でも仕方ないかぁ……、これもお仕事よ』
自分に言い聞かせた。
知らないおじさんにすれ違う度に父が私を紹介して、軽い世間話が始まる。
私も愛想笑いで応えた。
正面の舞台では何かで受賞した男性が挨拶をしている。
まわりが拍手をしたので、美奈子もつられるように拍手をした。
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