841人が本棚に入れています
本棚に追加
美奈子の思いが通じたのか、数日後、悠介と悠介の親が仕事の話でやってきた。
それから二人が付き合うようになるまで時間はかからなかった。
父が亡くなったときも悠介が支えてくれた。
美奈子は本当に悠介のことを愛していた、
でも……
―――――――――――――――
「ごめん、明日は会えなくなった」
「どうして?」
「どうしても外せない会議が入ってしまったんだ」
「そう……わかった」
「ごめん、来週の土曜日はいける?」
「まだわからないわ……また調べてこっちから連絡するから」
「うん、ありがとう。じゃあまた連絡待ってるよ」
「うん、またね……」
そう言って美奈子は携帯の通話を切った。
『最近全然会ってくれないじゃない』
「もう付き合って4年よ……」
29歳になった美奈子は悠介からのプロポーズを待ち続けていた。
今まで美奈子に言い寄ってくる男は山のようにいた。そのほとんどが美奈子の財産目当てで、お金にしか目のないような男ばかりだった。
そうじゃない男性もいたのかもしれない……、それでも美奈子は断り続けた。
それは悠介を愛して、信じていたからだ。
でも最近の悠介は冷たい気がする。
『もしかして……』
悪い予感が頭をよぎる。
『悠介に限って、そんなことないわ……』
そう思いながらも美奈子はゴミ箱に捨てた赤い名刺を手に取っていた。
最初のコメントを投稿しよう!