『美奈子』

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特に目立つ記事はなかった。 美奈子は朝食を食べ終えるとノートパソコンをバックに入れ車庫に向かった。 黒のベンツに乗り込み、スイッチを押してシャッターを開ける。 「いってらっしゃいませ」 玄関の前で待ち構えていた片桐さんがそう言って、美奈子を見送った。 車を走らせてすぐのことだった。 ピピピッ ビピピッ 美奈子の携帯が鳴った。 カーナビの通話ボタンを押して電話に出る。 「はい、どうしたの?」 「あっ、社長おはようございます」 秘書の相沢からだった。 「あのですね……前月の企業利益を計算しましたところ、予定していた数値より8%ほど下がっていました。」 「……そう、8%も……、担当は誰だったの?」 「えっと……担当は……川原です」 『どうしてすぐに名前が出てこないの? 使えない秘書ね……』 美奈子は少しイラッとしながら、すぐに 「川原はクビにするわ」 「本当にいいんですか?……」 「ええ……何か問題でもある?」 「いえ、問題はありません……」 「じゃあすぐに退職の書類を作っておいてね…、もうすぐ着くから、川原を社長室の方に待たせておいて」 「はい、わかりました」 相沢はそう言って電話を切った。
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