841人が本棚に入れています
本棚に追加
特に目立つ記事はなかった。
美奈子は朝食を食べ終えるとノートパソコンをバックに入れ車庫に向かった。
黒のベンツに乗り込み、スイッチを押してシャッターを開ける。
「いってらっしゃいませ」
玄関の前で待ち構えていた片桐さんがそう言って、美奈子を見送った。
車を走らせてすぐのことだった。
ピピピッ ビピピッ
美奈子の携帯が鳴った。
カーナビの通話ボタンを押して電話に出る。
「はい、どうしたの?」
「あっ、社長おはようございます」
秘書の相沢からだった。
「あのですね……前月の企業利益を計算しましたところ、予定していた数値より8%ほど下がっていました。」
「……そう、8%も……、担当は誰だったの?」
「えっと……担当は……川原です」
『どうしてすぐに名前が出てこないの? 使えない秘書ね……』
美奈子は少しイラッとしながら、すぐに
「川原はクビにするわ」
「本当にいいんですか?……」
「ええ……何か問題でもある?」
「いえ、問題はありません……」
「じゃあすぐに退職の書類を作っておいてね…、もうすぐ着くから、川原を社長室の方に待たせておいて」
「はい、わかりました」
相沢はそう言って電話を切った。
最初のコメントを投稿しよう!