『美奈子』

6/7
前へ
/143ページ
次へ
「おはようございます」 川原は浅く頭を下げた。 「ちょっと中に入って」 そういいながら社長室の中に入り、川原と相沢も後を追って部屋に入った。 美奈子が椅子に座ると川原の方から先に口を開いた。 「あの……ここに呼ばれたのは、どういった用件でしょうか?」 「あなた、企業利益が予定より8%も落ちてるようね」 「すみません!!すぐに後期に向けて調整の方をおこないます!」 「もういいわ……」 「えっ……」 「あなたはクビよ」 「………!」 川原は驚いてすぐには理解できない様子だった。 「相沢、退職の書類を見せてあげて」 「はい」 そう言って相沢は川原の前にあるテーブルに書類を置き、紙を広げようとした。 ダン!! 「そんな!あんまりじゃないですか!」 川原が両手でテーブルを叩く。 相沢は驚いて体がビクッと動いたが、美奈子は動じなかった。 「そこの書類に書いてる条件で納得してもらえるはずよ」 「社長!……私はあなたのお父さんと一緒にこの会社を育ててきたんだ」 「お父さんは関係ないわ」 「関係ない?」 「ここは私の会社よ、あなたはもう必要ないの」 「必要ない……」 その言葉を聞き川原はうつむいて、黙ってしまった。 部屋に少しの沈黙が流れた。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

841人が本棚に入れています
本棚に追加