『美奈子』

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「もういいでしょ、書類にサインして、また持ってきてちょうだい」 「…………。」 川原はうつむいた頭を上げ美奈子の方を見た。 「……美奈子さん、あんたはお父さんが亡くなってから変わってしまった」 「変わってないわ」 「……今のあんたはただの鬼だ!こんなの認めないからな!」 バサッ!! 川原は勢いよく、右手でテーブルの上の書類を払い落とし、部屋を出ていった。 「……少し言い過ぎじゃないですか?」 相沢は床に落ちた書類を拾い集めた。 「いいのよ、川原とはちゃんと話をつけておいて」 「……はい、わかりました」 相沢は書類を拾い終えると部屋を出ていった。 誰もいなくなった部屋で美奈子は深いため息をついた。 「……変わってなんかいないわ」 バッグからノートパソコンを取り出すと、仕事を始めた。
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