プロローグ

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「約束…だからな?」 この言葉は、常に纏わりつく影のように頑なに張り付いたまま離れない。 約束は、分かってるつもりだ。 だけど、夢が分からない。 言葉の意味を理解しようとしても、言葉が言葉ではないようで、分かりかけることさえなかった。 そうだ。 約束なんだ。 それだけは分かる。 それしか分からない。 分からないまま、大人になる。 『彼』の言葉は、オレにとって偉大なものばかりだ。 偉大なもの? 意味を理解できないのに、偉大だなんてどうして言えるんだろう。 分からない。 右も左も分からない自分が、好きじゃなかった。 ただ、生きている。 周りの人々の生き様に影響され、その残像を自分に重ねては、「これでいい」と瞬きせぬ間に納得する。 自分はまだ子供だ。 焦る必要はない。 言い訳だとは分かっていても、それを言い訳のまま片付けて。 夢も、誇りも、希望も、そして約束も、ただ時の流れに溺れてゆく。 「これでいい」 「これでいい?」 自分が嫌いだ。
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