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「相棒?」
体が揺れる感覚。
空気を震わせて耳に届く声に目を覚ます。
ゆっくりと浮上する意識の中、まだ朧気な視界に<遊戯>の姿が入ってくる。
「どうした?うなされてたぜ。」
遊戯の頬に零れ落ちる涙を拭い取り、心配げに覗き込む<遊戯>を見ると、頬に触れていた<遊戯>の手に遊戯の手が重なる。
…暖かい…。
目を閉じて、その感覚を確かめる。
「夢じゃないよ…ね。」
「ん?」
「ここに…、キミは居るんだよね…?」
その言葉で、あの時の夢を見ていたのだと悟る。
ゆっくりと目尻を下げ、遊戯を見つめて取られた手を握り返す。
「オレはここに居るぜ。夢なんかじゃない、ずっと相棒の傍に居る。」
愛しいこの人の為に、<遊戯>はここに戻ってきた。
ずっと、この愛しい人の傍に居たいと。
冥界の扉の先は、<遊戯>の居たい世界ではなかったから。
遊戯が居なければ、何処へ行こうとも、あのパズルの中のような真暗闇の世界だから。
一面の闇の広がるその世界から、こうやって戻ってこれたのは、遊戯の持つ、何もかも包み込む大きな光のおかげ。
役目も終えた今は、三千年前のファラオではなく、一人の人として、自分の意志でここに戻ってきた。
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