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そんな遊戯を見て、浮かべた笑みが自然と深くなる。
「オレの前で我慢しなくていい。そのままの相棒で居てくれ。」
耳元で囁くように告げられた言葉に静かに頷き、頬を染めたままで<遊戯>を見つめる。
「大好きだよ。もうひとりのボク。これから先もずっと…傍に居てね。」
この気持ちを知ってしまってから、独りでなんて居られない。
この先の道を一緒に進んでいきたいと思えるのも、<遊戯>だけだから。
そして…、<遊戯>もまた共に歩いていきたいと思うのも、遊戯だけだから…。
喜びも、哀しみも、全ては愛しい人が居てこそ形を為す。
「好きだぜ、相棒。」
見つめてくる紅い瞳に見惚れて、そして囚われる。
それから逃れるつもりはないけれど、体の奥から上がってくる熱と激しく打ち付ける鼓動に堪えきれなくなる。
「もう…ひとりの…。」
言葉は近づいてくる唇に塞がれる。
たった一つの願い。
お互いが傍に在れる事。
その幸せを噛み締めるように、二人の時間がゆっくりと過ぎていった。
―願い(完)―
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