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見れば見るほど『かっこいい』部類に完璧に当てはまる容姿を持つこの男は、どうやら本当に頭が『イタイ』らしい。
まぁ。それは自分に告白してきた時から分かっていたつもりだったが……。
大体普通はいない。
自分より体格が良くて、
自分より強面で、
自分と同じ男に告白する奴なんぞ。
……更に押し倒そうとする奴はもっと少ない筈だ。
わからん。この阿呆のことは……。
ちらりと横目で七原を見る。
更に語りにヒートアップしてきた七原はそれこそ、本当に嬉しそうに川田の魅力(何時の間にか『桃』からそっちに替わっていた)を熱弁していた。
それでも。
「七原」
最後の食器を洗い籠に収め、蛇口を閉める。
突然呼ばれた七原は、驚いた様に川田を見た。
「桃すきか?」
口角を軽く上げ、川田が笑う。
「!!」
1秒も開けないで七原は飛びついてきた。
洗い物が弾いた水滴で塗れた身体に、何の躊躇も無く抱きつき、頬にたくさんキスをしてきた。
そして唇が離れるたび
「すき」
「すき」
と囁いている様だった。
濡れた片手を七原の背に回しながら、川田は今自分の顔は火が付いた位赤いであろうことを自覚していた。
此処まで末期になる位愛されているなら良いか…。
と、思う。
今まで強面の自分を『桃』にたとえる奴なんていなかったから。
はしゃぐ七原の声を耳にしながら、
……興奮して握り潰された桃の汁が、床に落ちるのを感じながら
「今だけやからな…?」
と、七原が気付かない……怒気を含んだ声で囁いた。
END
*阿呆の子七原
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