36.5/桐川

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……一応言って置くが、決してその機能は直せない程酷いわけではない。 むしろ部品があれば川田なら難なく直してしまうだろう。 『部品が有ればな』 動かないポンコツを視界に入れたまま、川田は苦々しく心中呟いた。 確かに、運良くこの近所には、機械部品を店舗に供えている電気屋が一軒だけあった。 そこに行けば修理用の部品が格安で(機種が古いから)手に入り、クーラーは直せただろう。 しかし、その一軒しかない電気屋の親父は……。 運悪くこの熱さに、熱中症で倒れていた。 父親一人で経営していたのであろうその店は、あっさりと『只今、臨時休業中です』の看板を下げている。 熱風を何とか和らげようと奮闘する、役立たずな扇風機の風を浴びながら、川田はそんなことを考え、壁につけられた温度計に目をやった。 41,か2…度 ぼろいが頑丈そうなそれは、見た途端更に暑くなる温度を指している。 (うあ。マジか?風邪だったら死んどるわ。) ズルル……と、壁から擦り落ちていく。 人間の平均体温て確か……。
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