36.5/桐川

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(…と言うか、何で此処に来たんやろ。) 足先で倒れる――転がしたい衝動に駆られるソレ――を視界に置きながら川田は溜息をつく。 桐山が暮らすアパートは、はっきり言って此処よりランクは高い。 (まぁ。行く度行く度大掃除になるからそうは見えへんが……。) 立地条件もいいから、この時間帯なら此処と違い日陰だろうし、なんと行っても同じく設置してある(勿論此処にあるものより質の良い)クーラーが正常に動く筈だ。 だが、桐山は此処にいた。 人並み以下の体温を保持して。(この間『風邪だ』と熱を測ったら38度で倒れとった。) 川田は誘惑に釣られるまま、伸ばした足を試しに、桐山の学ランを外して背にくっつけてみた。 じゅわっ…… 途端。帯びていた熱が、足から吸い取られていく感覚を感じる。 (気持ちええ…。) 桐山の背は思った通り冷たく、足はまるで(大げさかも知れないが)氷に触れた様。 更にもう片足も入れてみる。 ひんやりとした感覚がそこからも伝わり、思わず顔が緩む。 心なしか、それまで感じなかった扇風機の風も涼しく感じはじめた。 (抱きしめたら気持ちええやろなぁ。) 思わず普段なら危険事項な事まで頭に浮かんでしまう。(普段そんなことをやった日には間違いなく腰を痛める羽目に陥る) そして、 『寝てるから大丈夫やろ』 と川田は突っ伏している桐山に近づいた。
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