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「36.5度」
そして確かにそう囁いて、桐山はキスしてきた。
体温の低い桐山の唇はやっぱり冷たくて、一瞬『氷が押し付けられたのか?』とさえ思ってしまう。
「聞こえとったんか……」
離れていった唇に投げかけた問いは、語尾がはっきりしないまま再び塞がれる。
茹だる様な炎天下。
下手すりゃ、ハイヒールどころか普通の靴さえ、柔らかなアスファルトに埋まりそうな熱風を伴う雰囲気が町中に広がっている。
そんな影響を食らっているサウナの様な室内。
なんとなく納得は出来ないが
「…したい」
桐山が川田の黒いタンクトップの中に手を入れながら囁いた。
相変わらずの無表情の額に、汗を浮かべて。
川田は一瞬迷った様に瞳を空に泳がすと、桐山の首に手を回し、
「俺は『イイケド』お前暑くないんか?」
と何時もとは考えられない言葉を耳元で吐いてみた。
瞬間。桐山の無表情が――傍から見ても分かる位――変化する。
それから、
嬉しそうに、髪の毛で川田の首をなぞるように頷く。
桐山の体温が気持ちいいから。
胸に唇を押し付けてきた桐山の髪にキスし、少し笑って、川田は桐山の背に腕を回した。
END
*書いた本人も暑さで脳沸いてた。
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