嫉妬/桐川

3/5
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
相変わらず帰ると同時にコンビニの袋を受け取り、中に必ず入っていくプリンの蓋を開け始めていた桐山は、何かを自分の手に見つけた川田の方を見た。 財布と小さな紙。それが川田の手に確認出来た。 「なに?」 半分食われたプリンの器にスプーンを刺したまま桐山が、川田を覗いてきた。 口の端にはカルメラが少しついていて、川田は指の背でそれを拭ってやる。 「あー。たいしたものやあらへん」 桐山の姿に笑いながら川田は答えた。 川田にしてみればそれは本当にたいした物では無かった。 こう言う形では初めてにしても、告白をされたことが無い訳ではなかったし、レジの娘と付き合う気が無かったからだ。 まず第一彼女の事をほとんど知らないし、(レジでだって事務的な会話しかしたことが無い。) 多分彼女はかなり年上だ。(彼女からして見えれば川田は同年代に見えるだろうが。) それから……川田は見かけによらないかも知れないが、派手な女は好かない。 女は大和撫子がいいと思っている。 ……女は。 桐山は別として。 とにかく、川田はその娘と付き合う気はこれっぽっちも無く、 電話も、「かけるとか?」と言われれば『NO』だった。 川田は桐山から視線を外すと、すぐさまゴミ箱の方に向き紙をくしゃくしゃッと片手で器用にまとめ、ゴミ箱にポイッ…と……。 がし。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!