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『化粧くさい派手な女』
川田が良く行くコンビニには、桐山も時々付いていっていた。
だから、川田は気付いていなかったが、レジの強い香水の匂いの強い女が、ちらちらと川田を見ているのにも気が付いていた。
……川田が全く気にしていなかったから、ほって置いたが。
「……殺す」
桐山の瞳が怪しく光る。
その目は無表情なだけに異様に怖かった。
「お前何考えとるん!!」
思わず川田は叫んだ。桐山は本当に『殺』りかねない表情をしていた。(注:無表情)
…更にその時実際桐山の頭の中では、死体処理方法まで探っていたのだが、そこまでは川田に伝わっていなかった。
桐山は川田の方に振り返ると
「…川田。取る。殺す。」
と、呟いた。
…瞬間。
物騒な言葉とは裏腹に、川田と合わせた目は子犬の様な――何時もの桐山に戻っていた。
それからズズ…と川田に近づき、ぎゅっと体を抱きしめてくる。
余りの唐突さに驚いた川田も、
もそっと動いた桐山の柔らかな髪の毛が、鼻の下辺りをくすぐるそのくすぐったさに身を縮め、そのまま桐山を抱きしめ返す。
「あほやなぁ」
「……」
「俺は取られへんって」
「……川田。俺の」
「わーっとるわ」
ぎゅっと更に強く抱きしめられ川田は、ふう。と息をつく。
分かっていたつもりだったが
桐山の嫉妬深さに、複雑な感情が湧いて来てくる。
困った奴やな。
でも
何や嬉しいなぁ。
って俺もけったいな奴やな……。
好みに無いにしてもネェちゃんより、桐山の方がずっと好きなんて。
ふと、
もし桐山が同じ事をされていたらどうだったか?
等と言うそれこそ末期の考えが浮かんだが、それは直ぐ笑みに変わった。
それから
「お前のモンや。俺は」
そう言って川田は抱きしめ、
「…」
微かに腕の中で、桐山は嬉しそうに頷いた。
+++++++
二日後。なのにコンビニのネェちゃんはいなくなっていた。
END
*合掌
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