神の子/光川

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「お財布忘れたから」 知らず間に声が震えた。 知らず間に胸の鼓動が早まる。 知らず間に貴方から視界が離せなくなっていた。 震える足を何とか操って私は自分の席に歩んだ。 それから震える指先で自分の机を弄ったわ。 ねえ。分かる?私緊張していた。 ねえ。分かる?私お金を貰う訳でも無いのに演技してた。 「そか」 そっけなく言って貴方は私から目を離し、元通り窓辺に体を預け、外の世界を覗いてた。 ねえ。分かる?貴方の視界が私から離れた途端やっと身体が自由になったの。 ねえ。分かる? 「うん」 「さようなら」 「ああ。さよなら」 貴方の一言が。 何気ない音質が。 この世界に私だけじゃないことを知らせてくれたの。 私より深い闇を抱えた貴方。 貴方の闇を抱えて眠れたらどんなに幸せだろう。 貴方が私に己の不幸を語ってくれたらどんなに幸せだろう。 貴方の闇に抱かれたらどんなに幸せだろう。 貴方の闇を抱けたらどんなに幸せだろう。 貴方の瞳が私を犯したらどんなに幸せだろう。 貴方を癒せたらどんなに幸福だろう。 傷の嘗めあい? いいじゃない。 きっと貴方の傷の方が深いのね。 BR法。
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