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武器の持った手を、その重みと重力にまかせブラブラと揺らしながら光子は囁いた。
血に濡れ固まり始めた髪を手櫛で梳かし、顔に張り付いた返り血を制服の袖で拭う。
制服が埃で汚れていたら立ち止まり、パンパンと普段通りに払った。
服に媚りついた血は取れないが、これは仕方ない。
それよりシャワーが浴びたいわ。
そう思いまた歩き出す。
川田章吾のことは忘れなかった。
「川田くん」
また名前を囁く。
まだ彼は呼ばれてなかったわよね。
生きているのね。
うん。
彼は生き残る人だもの。
私の闇を抱えて。
光子はふと、杉村の事を思い出し苦笑した。
彼は人を探しているといった。
「馬鹿ね」
本当に必要な人は探すものじゃないのに。
偶然にしても
必然にしても
必ず会うように出来ているのだから。
「川田くん」
きっと彼と私もそう。
出会うように出来ている。
あの日の彼は私の目と眼をしながら知らない瞳をしていた。
だけど今は私も同じ瞳をしている筈。
人を殺したから。奪ったから。奪うから。
あの瞳は『人殺し』の瞳だったのね。
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