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元はと言えば、母は働きすぎだったのだろう。
父、つまり私にとっての祖父を中学の時に亡くし、十五歳から美容師として働きはじめた。
以来、産前産後ですらろくに休みをとらず、働き続け、旅行の1つにも行かず、私を育ててくれた。
しかし、私は小さいころ、そんな母が嫌で仕方がなかった。
土日は仕事。
学校の行事もこれず、ろくな思い出もない。
夏休みに休みが合うときに近場にドライブに行く程度だった。
「こんな子供に寂しい思いをさせるような美容師になんて私は絶対にならない!!」
私は母にいつもそういっていた。
その気持ちのあらわれなのかどうなのか、私は髪の毛アレルギーになっていた。
カットされた細かい髪の毛をみると、鳥肌がたち、痒くなるのだ。
母も、
「この子にあとを継がせるのは無理か…。」
そう思っていた。
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