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雄太と桜華は2人で暮らし始めた…
桜華がこの世から、去ったと思っていたあの日から…
あの桜の木の下で
再び出会うまでの間の空白を思い出でいっぱいにする為に…
『雄ちゃん』
『あ?どうした?』
『今日あの丘までピクニックに行こうよ♪』
あの丘とは、2人の約束の場所…
大きな桜が咲き誇るあの丘…
『良いな!でも、弁当はどうすんだ?』
『へへぇ~実は私、早起きしてお弁当作ってたの♪』
あぁ…朝からガタガタやっていたのはそのせいか…
『じゃあ、行くか!』
『やったぁ♪準備するね』
朝慌ただしくキッチンで何をしていたのかと思えば…
嬉しそうに準備をする桜華を見て雄太は改めて"桜華"と言う女性がどれだけ自分にとって大切な人なのか思い知らされる…
他人にとっては細やかな幸せであろう事も…
今の雄太にとっては、掛替えのない大きな幸せに思える…
当たり前な事なんて、何一つない…
雄太はそれを知っている。
明日も笑顔の彼女に会えるとは限らない…
自分に明日が来るかだって分からない…
もし自分が今死んでしまったら…
せっかく戻ってきた桜華はどうするのか?
あの時…桜華が居なくなったあの時…
あの悲しみを桜華にも味会わせる事になる…
そう考えると、雄太は今この幸せな時間が少し怖く思えた。
しばらくして、準備が出来た様子の桜華が笑顔で駆け寄って来た。
『雄ちゃん♪準備出来たよぉ~』
『はいはい、じゃあ、行くか~』
そう言って雄太は優しく笑い桜華の頭をそっと撫でた。
『うん♪』
桜華は子猫の様な可愛らしい笑顔で頷いた。
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