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小高い丘の上
大きな桜の木
その桜が咲くと思い出す…
今は亡き君の事…
会いたい…
会いたい……
会いたい………
小高い丘の上に咲く桜の木の下…
楠雄太(クスノキユウタ)は仕事が休みになるたびに、此所に来た…
大好きな彼女に会いに…
この世に居るはずの無い
彼女に会いに…
雄太の彼女は去年交通事故によりこの世を去り
彼女がこの世を去ったその日、雄太は彼女にプロポーズをしようと彼女と会う約束をしていた。
小高い丘の上に咲く
この桜の木の下で…
『桜華(オウカ)…今日もお前に会えるかな?』
此所に通う様になって一年たち
彼女がこの世を去った桜の咲く季節が来た…
休日のある日、雄太はいつもの様に彼女を待っていた。
『今年も綺麗に咲いたな…
お前もそう思うだろ?桜華…』
雄太がそう呟いた瞬間強い風が吹き桜の花びらが舞った…
咄嗟に目を瞑った雄太が目を開けるとヒラヒラと舞散る桜の花びらの中見覚えのある姿が目に映った。
『桜華!』
花びらの中に立っていたのは間違なく桜華だった。
『今日も…来てくれたのか…?』
雄太の問いに彼女は唯笑顔でこちらを見ているだけで、答える事はしない。
『…これでホントに触る事が……
抱締める事が出来たら……』
雄太はこの丘に来るたび…
桜の木の下で桜華を思うたび…
決して触れる事の出来ない話をする事も出来ない最愛の人の幻を見てきた…
『お前は何故俺を置いて
逝っちまったのかな…
会いてぇよ…
抱締めてぇよ…
お前の優しく俺を呼ぶ声
が聞きてぇよっ!!
桜華…
俺死んだらお前に会えっかな…』
雄太は目に涙を溜めながら彼女の幻に問い掛け続けた…
だが、今日の幻はいつもと違っていた…
いつも何の問い掛けにも答えず唯微笑んでるだけの彼女の幻が…
こちらへ走って来てそっと口を開いた…
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