沖田①【笑えない】

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「総司さんって、いつも楽しそうに人を斬りますよね」 そんな彼女の言葉に、沖田は「おや?」と首を傾げた。 「華乃さんは楽しくないんですか?」 「楽しく、は、ないですね」 そう言って華乃は、刀に付いた血糊を振り払った。 借り物の太刀だが、大人数相手には懐刀より役に立つ。 そう、本日の任務は不逞浪士の一斉捕縛だった。 しかし、捕らえる筈だった浪士達は既に全滅している。 刀を抜いて抵抗された為、仕方なく正当防衛のもとに処分したのだ。 相手が十数人に対し、こちらは沖田と華乃の二人だけだった。 華乃は自分に牙を向く者だけを斬ったが、沖田総司、彼は違う。 沖田は、例え敵が命乞いしようが詫びようが、始終笑顔で斬り捨てていった。 「……総司さんは、斬られる相手が何を思って死んでいくか考えたことありますか?」 「え?…そりゃ、痛いなぁ…とかですかねぇ?」 「あはは、貴方らしいですね。分かっていても容赦ないんですから」 「その人の気持ちはその人にしか分からないものじゃないですか。いちいち気にしてられませんよ。それとも貴女は、相手に同情しながら斬ってるんですか?」 「いいえ?同情してたら剣なんて振るえませんよ。私は常に、相手から恨まれる覚悟で殺してます」   「じゃあ…何でそんなこと訊くんです?」 彼女の言いたいことがさっぱり分からない。 沖田が訝しげに眉を寄せると、華乃はフッと寂しげに笑った。 「…別に大した意味なんてありませんよ。ただ、もし…貴方と私が…闘う羽目になったら……やっぱり貴方は、笑っているのかなって…」 その言葉には、さすがの沖田も面食らい、慌てて首を左右に振った。 「な、何言ってるんですか!私が貴女を手にかける筈ないでしょう!?」 以前ならまだしも、彼女を想う気持ちを自覚した今、自ら傷つけようなんて決して思わない。 「ふふ、本当ですか?」 「当たり前です!」 そう答えた時も、彼女はやはり困ったように笑っていた。 あの時、彼女は気づいていたのだろうか? こうなることを…。 目の前に立ちはだかるのは、愛しい貴女。 「私が…」 ああ… 「…華乃さんを…」 やっぱり笑えませんよ… 「……殺す…」 どうしてこうなってしまったのだろう… 私はただ、一緒に楽しく過ごしたかっただけなのに… もう戻れないあの日に思いを馳せて。 沖田①【完】
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