藤堂①【くじ引き】

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今朝早く、土方は新撰組幹部達を己の部屋へ呼んだ。 「え~…今回お前達に集まって貰ったのは、その…まぁ…ひとつ、頼みてぇことがあって、だな…」 「それは、我々全員にですか?」 土方の切羽詰まった様子から、よほど重大な事件なのだろうと、斎藤は真剣な顔で尋ねた。 すると土方も、覚悟を決めたように口を開く。 「誰か一人、小倉を迎えに行って欲しい!」 「は~い解さ~ん、みんな戻っていいぞ~」 「え!?ちょっ、近藤さん…!」 なぜ!?と慌てる土方の頭を、近藤は軽く叩いた。 「アホか。そんなことでいちいち集合をかけるな。みんなも迷惑するだろ」 「これは重大なことだぞ!?」 尚もしつこい土方に、幹部達は皆怪訝な顔になった。 「土方副長、小倉さんの迎えのどこが重大なんですかぁ?」 「よく訊いてくれたな藤堂!つまりだな、ここは女人禁制の場所だ」 「まぁ…そうですね」 「そして小倉は女だった」 「ですね。どんなに夢だったら良かったか…」 「それでだ」 「は?」 「小倉と面識のない新米の奴らが、アイツを追い返してしまう可能性があるだろ?」 「はぁ…。でもそんなの、あの小倉さんなら余裕で蹴散らして…」   「だから困るんだろーが!大事な隊士達が怪我を負ったらどうする!?」 「そっちの心配っスか!?」 予想外だった。が、しかし大いに納得。 確かに、土方の言うことは一理ある。 皆はウンウンと頷いた。 「つまり…誰かが小倉さんの暴走を止めなきゃなんないってこと?」 「そうだ」 「土方さん土方さん!なら私!私が行きます!」 その時、藤堂と土方の間を割って入るように、沖田がそう申し出た。しかし… 「駄目だ。昨日も言ったろ、お前は今日一日謹慎処分だって」 「そんな~…」 「いさぎよく諦めろ」 沖田は肩を落とすと、心底残念そうに席に戻った。 その姿に、少し感じた罪悪感は否めないが、致し方がない。 土方は溜め息をついて、他の者達を見渡す。 「じゃあ、他に誰か立候補者はいねぇか?」 瞬間、シンっと静まり返る部屋。そう、見事なまでに手を挙げる者はいなかった。 (まぁ…予想通りだな) 自分もそこまでバカじゃない。こうなることは予想していた。 土方は昨晩作ったある物を、トンっと畳の上に置く。 「よし。ここは公平にくじ引きで決めるぞ。それで恨みっこなしだ」  
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