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今朝早く、土方は新撰組幹部達を己の部屋へ呼んだ。
「え~…今回お前達に集まって貰ったのは、その…まぁ…ひとつ、頼みてぇことがあって、だな…」
「それは、我々全員にですか?」
土方の切羽詰まった様子から、よほど重大な事件なのだろうと、斎藤は真剣な顔で尋ねた。
すると土方も、覚悟を決めたように口を開く。
「誰か一人、小倉を迎えに行って欲しい!」
「は~い解さ~ん、みんな戻っていいぞ~」
「え!?ちょっ、近藤さん…!」
なぜ!?と慌てる土方の頭を、近藤は軽く叩いた。
「アホか。そんなことでいちいち集合をかけるな。みんなも迷惑するだろ」
「これは重大なことだぞ!?」
尚もしつこい土方に、幹部達は皆怪訝な顔になった。
「土方副長、小倉さんの迎えのどこが重大なんですかぁ?」
「よく訊いてくれたな藤堂!つまりだな、ここは女人禁制の場所だ」
「まぁ…そうですね」
「そして小倉は女だった」
「ですね。どんなに夢だったら良かったか…」
「それでだ」
「は?」
「小倉と面識のない新米の奴らが、アイツを追い返してしまう可能性があるだろ?」
「はぁ…。でもそんなの、あの小倉さんなら余裕で蹴散らして…」
「だから困るんだろーが!大事な隊士達が怪我を負ったらどうする!?」
「そっちの心配っスか!?」
予想外だった。が、しかし大いに納得。
確かに、土方の言うことは一理ある。
皆はウンウンと頷いた。
「つまり…誰かが小倉さんの暴走を止めなきゃなんないってこと?」
「そうだ」
「土方さん土方さん!なら私!私が行きます!」
その時、藤堂と土方の間を割って入るように、沖田がそう申し出た。しかし…
「駄目だ。昨日も言ったろ、お前は今日一日謹慎処分だって」
「そんな~…」
「いさぎよく諦めろ」
沖田は肩を落とすと、心底残念そうに席に戻った。
その姿に、少し感じた罪悪感は否めないが、致し方がない。
土方は溜め息をついて、他の者達を見渡す。
「じゃあ、他に誰か立候補者はいねぇか?」
瞬間、シンっと静まり返る部屋。そう、見事なまでに手を挙げる者はいなかった。
(まぁ…予想通りだな)
自分もそこまでバカじゃない。こうなることは予想していた。
土方は昨晩作ったある物を、トンっと畳の上に置く。
「よし。ここは公平にくじ引きで決めるぞ。それで恨みっこなしだ」
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