藤堂①【くじ引き】

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くじ引きの順番が自分に回ってくると、藤堂は緊張に頬を強張らせた。 (く、くじ引きって…) 運任せもいいところだ。 それを思い付いた副長もある意味凄い。 (小倉さんが知ったら激怒しそうだなぁ) その光景が目に浮かぶようだと、彼は引きつった笑みを浮かべる。 「早く引け藤堂っ」 考え事をしていると、後ろから土方に急かされ、藤堂は慌ててくじを引いた。 そして、開いた紙の文字に目を走らせ… 「………副長…」 「どうした?」 「…アタリには…なんて書いてあるんですか…?」 「あ?」 プルプルと震える藤堂の手。土方は彼の手にある紙を、そっと上から覗き見た。 するとそこには、『どんまい』と達筆な文字が書かれていた。 「あ~あ、アタリを引いちまったか…」 「え゛」 「よし、迎え役は藤堂に決定だな。みんな~もう解散していいぞ~」 「えええええ!?」 藤堂は愕然として叫んだ。 その隙に、ゾロゾロと、安心しきった顔で部屋を出ていく幹部達。 (え?え?うっそ!?マジで俺!?) まさに生け贄に選ばれた気分だ。 「ふ、副長~!」 「コラ、泣き言はやめろ。これも運だ」 「いやいや!どんまい!?何故にどんまい!?」 「あ、それは頑張れという意味を込めてだなぁ」 「って、これじゃアタリというよりハズレじゃないですかぁ!!」 もし小倉さんの機嫌を損ねたら、一体どんな目にあうか分からない。 だから誰ひとり立候補しなかったのだ。 「そうとも言うな」 「開き直ったよこの人ぉぉお!!」 「だあ!るっせぇ!つべこべ言わずさっさと行け!」 土方は耳元で喚く藤堂の首根っこを掴み、ポイっと庭へ放り投げた。 「やっぱ鬼っスよアンター――!!」 土方の持つ鬼副長の異名を、改めて再確認した瞬間だった。 こうして藤堂は、問題の少女と出会うこととなる。 が、それはもう少し先のお話… 藤堂①【完】
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