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くじ引きの順番が自分に回ってくると、藤堂は緊張に頬を強張らせた。
(く、くじ引きって…)
運任せもいいところだ。
それを思い付いた副長もある意味凄い。
(小倉さんが知ったら激怒しそうだなぁ)
その光景が目に浮かぶようだと、彼は引きつった笑みを浮かべる。
「早く引け藤堂っ」
考え事をしていると、後ろから土方に急かされ、藤堂は慌ててくじを引いた。
そして、開いた紙の文字に目を走らせ…
「………副長…」
「どうした?」
「…アタリには…なんて書いてあるんですか…?」
「あ?」
プルプルと震える藤堂の手。土方は彼の手にある紙を、そっと上から覗き見た。
するとそこには、『どんまい』と達筆な文字が書かれていた。
「あ~あ、アタリを引いちまったか…」
「え゛」
「よし、迎え役は藤堂に決定だな。みんな~もう解散していいぞ~」
「えええええ!?」
藤堂は愕然として叫んだ。
その隙に、ゾロゾロと、安心しきった顔で部屋を出ていく幹部達。
(え?え?うっそ!?マジで俺!?)
まさに生け贄に選ばれた気分だ。
「ふ、副長~!」
「コラ、泣き言はやめろ。これも運だ」
「いやいや!どんまい!?何故にどんまい!?」
「あ、それは頑張れという意味を込めてだなぁ」
「って、これじゃアタリというよりハズレじゃないですかぁ!!」
もし小倉さんの機嫌を損ねたら、一体どんな目にあうか分からない。
だから誰ひとり立候補しなかったのだ。
「そうとも言うな」
「開き直ったよこの人ぉぉお!!」
「だあ!るっせぇ!つべこべ言わずさっさと行け!」
土方は耳元で喚く藤堂の首根っこを掴み、ポイっと庭へ放り投げた。
「やっぱ鬼っスよアンター――!!」
土方の持つ鬼副長の異名を、改めて再確認した瞬間だった。
こうして藤堂は、問題の少女と出会うこととなる。
が、それはもう少し先のお話…
藤堂①【完】
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