お梅①【最強伝説】

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芹沢の恋人、お梅が新撰組に入り浸るようになってから早一週間。 女人禁制のこの場所で、安全に過ごせるのは芹沢の恋人という肩書きのおかげか、それとも華乃の牽制のおかげか。 どちらかというと後者だろう。 しかしそんな中でも、未だにお梅を良く思っていない隊士達は少なくなかった。 「ちっ…目障りな女だなぁ」 舌打ちと共に聞こえた声に、お梅はビクリと肩を震わせる。 芹沢の部屋に向かう途中、偶然平隊士の男と鉢合わせになった。 女人禁制などの法度を重んじる男にとって、お梅ほど気に障る存在はなかったのだ。 「す、すみま…」 お梅は何と言ってよいか分からず、取りあえず謝ろうとした…その時、 「私の大事な人を傷つけて……貴方、無事で済むと思わないで下さいよ…?」 ヒヤリと凍える程の殺気に、地を這うような声音。 ハッとして後ろを振り返ると、そこには小倉華乃の姿があった。 「小倉さ…」 名前を呼ぼうとしてゴクリと息を呑む、華乃はお梅に目もくれず、ひたすら冷たい視線を隊士に注いでいた。 今にも男を殺してしまいそいな、一触即発の雰囲気だった。 対する男は、蛇に睨まれたカエルよろしく、恐怖で微動だに出来ずにいた。 「お、小倉さん…!小倉さん!」 お梅の必死の呼び掛けに、ようやく華乃の瞳がやや和らいだ。 そして次は心配そうな顔になり、彼女はジッとお梅を見つめる。 「大丈夫ですかお梅さん?何もされませんでした?」 「あ、はい…」 「でも酷いことは言われてましたよね?ちょっと待ってて下さい。今からコイツを埋めてきますから」 「え!?」 お梅は唖然となった。それは男も同じで、彼に至っては恐怖のあまり半泣き状態だ。 「勘弁して下さい…!も、もう言いませんからぁ!」 有言実行なうえに情け容赦ない華乃の性格は、隊士達の中でも有名だった。 「ねぇ、後の祭りって知ってます?ああ…後悔先に立たずでもいいですね。次に生まれ変わった時は、よく覚えておいて下さい」 「ひぃぃ…!」 「や、やめて小倉さん!彼を殺さないであげて下さい!わたしなら平気ですから!」 華乃から庇うように、男の前に立つお梅。 「あ、あんた…俺のために…」 男は感極まった様子でお梅を見上げた。 「お梅さん…」 そんな彼らに、華乃は困ったような顔をする。 そしてしばらく時間が流れ、彼女はハァっと溜め息をついた。
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