🌸🍒短編小説集🍒🌸

Ｏｖｅｒ

「で…？俺はなんで死んだんだ？」
「とりあえず、それを自分で思い出してください。じゃないと私も手が出せないので」
「それが出来りゃ苦労してねぇ」
23歳の若さで死んだ椎名啓、はたまた成仏させようとする杉並麻弥16歳。この奇妙な組みあわせを、神様はどう眺めているのだろうか。
「しかし結構ショックだ…まだまたやりたい事は山積みだってのによぉ」
「諦めてください」
「お前、嫌な性格って言われねぇ？」
「貴方に言われたくはありません」淡々と述べる麻弥に深くため息を吐く。ベンチに座った二人の会話は途切れる事が無い。
「お前がもうちっと大人だったら、最後に良い出作って貰うのになぁ」
「変な想像は良いので早く思い出してください。」
「お前さぁ！俺をイラつかせるの好きだろう？」
「貴方なんか嫌いです」
麻弥の一言にさすがに黙らずおえなくなり、椎名は頭をがっくり落とす。
「まぁ…別に最悪の人生じゃあなかったが…振り替えるとつまらない一生だったな」
自嘲気味に微笑む椎名に麻弥は視線を前方に向ける。
「お伺いしてもよろしいですか？…貴方の話」
予期せぬ台詞に椎名は目を丸くさせたが、鼻で軽く笑うと両手を頭の後ろで組みもたれる。
「それって俺の人生の話？」
「他に何か？」
視線を戻し見上げる麻弥に、椎名は初めて優しい笑顔を見せる。
「聞いたって面白くねぇぞ？」
「話たくないのでしたら無理にはお聞きしませんが」
「…六歳の時、親が離婚、中学はほとんど通わなかったし高校は中退。しまいに人殴り殺して少年院ぶちこまれて。出てくりゃ誰一人仲間はいなくて」
麻弥は何も言わず、ただ見上げている。
「お前は？」
突然自分に振られ、少々驚きの表情を浮かべる麻弥に、椎名は口元で笑ってみせる。麻弥はまた視線を下ろすと、しばし沈黙した。