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地面をジリジリと焼き付ける太陽。
汗っかきだから化粧をしてもすぐに汗に流される。体中汗をかいていつも臭いが気になる。
アタシは夏が嫌いだ。いっそ夏が終わるまでうちに篭っていたい。
こんな夏嫌いなアタシて゛も唯斗が連れ出してくれる時は全く億劫ではなかった。
8月がまだ始まったばかりの頃、唯斗から報告を受けた。
「彼女と別れた…」
唯斗がフラれたらしい。
唯斗のいけないところはわかっていた。
「俺がちゃんと好きかわからないって言われた…」
俺はちゃんと好きなのに、と言い加えた。
彼女からすれば唯斗は最低な男だと思う。知らないから責められなかっただろうが浮気をしていたのだから。
これは後から決定的になってくるのだが、唯斗の悪い所はわかっていた。優柔不断で気持ちが覚束ないようにふらふらしている。言葉にするのが苦手で核心を突くのが怖くて逃げる。
フラれた理由に納得できた。
「唯斗は気持ちをはっきり示さないことが多々あるからね。」
決して慰めなかった。むしろ彼女にとって別れて正解だと思った、と同時にどこか喜ばしい気分になった。
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