終章

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カーテンを開けて窓の外を見れば、隣の家や電線や電柱が目に入る。見慣れたはずの風景なのに、違和感。 部屋の戸が開き、ママが目を瞠った。 「レイナちゃん! いつ戻って来たのー!?」 「あ、ママ。ただいま。今、戻って来たの」 「おかえりなさい! もー、心配したんだからっ!」 ママが私を抱き締める。そうだよね、一ヶ月振りだもんね。 「ママが帰ってから、色々あったんだよ? トッドとかドリアドにも行ったし」 「取り敢えず話は後。リビングにいらっしゃい、お茶でも飲みながらゆっくり話をしましょ」 部屋着に着替えようとして、首から下げていた袋を思い出した。 中には指輪が、ちゃんとある。 ほんの十分くらい前だ、レアリーフェイドにいたのは。なのに、夢だったんじゃないかって思ってしまう。 携帯を充電器に繋いだ。待ち受けは、ロシュ君と二人で撮った画像。 マイクロSDにルー君やシューさんやエイダさんの画像も保存されてる。 「ちゃんと、現実……」 リビングに行く前に、開けずの間に寄ってみた。もう鍵が閉まってなかった。クローゼットも開けたが、何も入ってない状態で壁が見えるだけだった。 ママが帰ってからのことを一通り喋ったら、夕方になっていた。 ロゼオやサルマト、セラフさんに会ったことを話したら、(特にセラフさんが隊長になったくだりで)大笑いしてたけど、最後の最後に。 「本当に色々あったのねぇ……」 と、ママがしんみり呟いた。 「うん、いろいろ、あった……」 また泣けてきた。一生懸命涙を拭う私の頭をママが撫でる。 「私、また、行くから……っ」 「なら、いっぱい練習して強くならなきゃね。それに、剣道だけじゃなくて、勉強もちゃんとして……」 何かを思い出したかのように、ママが首を傾げた。 「……ところで優奈ちゃん、宿題は大丈夫なの?」 感傷的な気分は、一瞬で吹き飛んだ。涙も見事に止まる。 宿 題 大 丈 夫 じ ゃ な い 。 「ママ……今日、夜食をお願いします」 せめて、明日提出の分だけは終わらせねば……!
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