終章

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「おっけー、任せて。ところで、優奈ちゃんは夏休み中、修行で山籠もりしてたことになってるからねー」 「ええっ!? 何でそんなことに!?」 山籠もりする女子高生なんて、どこの格闘漫画の主人公ですか!? てか、シューさんやロシュ君に稽古つけてもらってたから、修行というのはあながち間違いじゃないけれども……! 「今時、携帯も繋がらない、電話もないなんてとこほとんどないしぃ、苦肉の策だったのよー?」 「だからって……」 ――その晩チェックしたメールには、友達から「あんた武蔵にでもなるつもりか(笑顔マーク)」とあって、違う意味で泣きそうになった……。 新学期。 完徹の眠い目を擦りながら、学校への道を歩く。やはり宿題全部は終わらなかったが、今日提出分だけは完成したので、よしとしよう。 「おっはー、相沢っ」 「おはよー萌野」 「久し振りだねっ、夏休み中修行の旅してたんだって?」 「……確かにメール返せない状況だったけど、その話は忘れて……」 電波も届かない田舎。もとい、異世界へ行ってました。なんて、言っても信じないだろうけど。 一ヶ月分、携帯に溜まってたメールを受信するだけで、凄いことになっていた。返信するより残りの宿題が大変で、今日一日中は、お詫び回りとお詫びメールの返信に費やすことになるだろう。 「それよりさー、高橋と別れたんだって?」 高橋……? 誰だっけとちょっと考えて、思い当たった。高橋と言うのは、元彼の名字だ。 そういやそんなこともあったな、と既に過去の記憶だが。 「誰に聞いたか知らないけど、そんな昔の話、どうでもいいよ。彼氏、出来たし」 「え、何で山籠もりに行って新しい彼氏が出来るのよ!?」 「熊に襲われたとこ、助けてもらったから?」 なんてね。 ――蛇足ながら、この話を本気にした彼女から、長年話題にされることになってしまうのである。 「平凡顔のくせに、何故相沢がモテる……!?」 「そんなこと言う萌野には、彼氏見せてあげない」 「あ、嘘うそっ、見せて下さい! 相沢様っ!」
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