一学期の終わりは全ての始まり

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「明日から行くわよー」と問題発言をしてくれたママに、私は嫌でも悟るしかなかった。 何だ、最初から連れてく気だったんだ。 と。 夏休み初日と言えば、帰省ラッシュと相場は決まっている。 イコール、交通機関のチケットが手に入り難い。イコール、だいぶ前から計画されていた。 てとこまでを想像した。 早くから言っておいてほしかった。心と服の準備が全然出来てないのに。故に、慌ててタンスの中身をひっくり返す羽目になってしまった。 そしてパパはお留守番らしい。夕食のテーブルでママとの別れを惜しんでいた。 「美伊奈、君がいない家なんて、まるで火の消えた蝋燭だよ」 美伊奈(みいな)はママの名前。パパはママを目の前にすると、いつも口説くような口調になる。 「政義さん、火事には気をつけてね。火は消えてるのが一番よ?」 政義(まさよし)はパパの名前だ。ママは人に喋る時でも、『政義さん』と言う。 微妙に噛み合ってない会話だ。二人が納得してるなら特には言わないが。 口を出すだけ野暮なんですよ、万年新婚夫婦なんだから、うちの親。 時々子供である私をほったらかしてデートに行っちゃうくらいなんだ。羨ましいっちゃ羨ましい。 ただし、あんまり子供の面前でいちゃいちゃするのは、私の教育上に悪いからやめてほしい。 そんなことを思いながら、見つめ合う二人をほっといて、私は食事に集中することにする。 でも二人が別々で旅行なんて、私が知る限り初めてなんじゃないだろうか。 もしかしたらうちの親、カケオチだったとか? それならパパが行かない理由も、ママが私だけ連れてく理由も全て納得なんだけど。 なんて、全部私の勝手な想像。 まあとにかく、私は大急ぎで旅行の支度をした訳です。 ―― 一週間分の、ね。 まさか一週間が、夏休み中になるなんて思いもしてなかった……。
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