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結井さんの忙しさは相変わらずで、無理しなくていいと言ったにもかかわらず、会えなかった時間を少しでも埋めたいからと今日は珍しく定時にはあがって大学まで迎えにくると言い張った。
私もそうそうバイトを休める訳ではないから、今日みたいに休みの日に駆けつけてくれるのはありがたいけれど、この疲れさせたくない気持ちをどう言えばいいのかわからずに、会いたい気持ちを優先して甘えてしまっている。
毎日、一緒にいられるわけではないから、こういう貴重な時間が何よりも大切なのだけど……。
そんなことを思いながら、舗装路を抜けて信号の向こうにあるコンビニを目指す。
足踏みをしながら信号待ちをしていると、鞄が僅かに震えて携帯を取り出す。
「もしもし」
『今終わった』
「お疲れ様」
大好きな声が耳をくすぐって笑みが零れる。
こんな短いやり取りさえ嬉しくて仕方がない。
『今どこ?』
「大学出たところの信号。コンビニ寄ろうかなって思って」
答えながら空を仰ぐと、街頭の明かりに反射しながら結晶が舞い降りる。
『あ、いたいた。駐車場にいるよ』
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